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Abendの憂我な部屋

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カテゴリ:本( 7 )


2013年 03月 03日

レクイエム

 歴史が好きである。何かに興味を持つと、その歴史の本を買ったり、ネットで調べることが多い。大学では国史学を専攻したかったのだが、受けた大学は全て不合格だった。志望学科は第三希望まで可だったが、第一希望の史学科、第二希望の哲学科がともに否で、第三希望の佛教学科に収まったというわけだ。

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 筆者は理工系の出身で、平尾貴四男に作曲理論を学んだジャーナリストであり、本書でも譜例を挙げながら、グレゴリオ聖歌から邦人作曲家の作品までを、読みやすい文章で解説している。ブラームスが古楽に強い関心を持っていたことや、ドヴォルザークのレクイエムとバッハのロ短調ミサとの関係についても、譜例とともに説明がなされている。また、筆者は作曲家たちの死生観についても述べており、本書をいっそう読み応えのあるものにしている。ただ、プッチーニのレクイエムが取り上げられていないのが不満ではある。
 レクイエムの歴史書というのは、ありそうでないものだ。本書は10年ほど前に購入したものだが、4月に河出文庫で再刊されるようなので、お勧めの一冊である。

 今日は桃の節句。お雛さんには京雛と東雛あって、お内裏さんとの位置関係が異なる。お雛さんが右に置かれるのが京雛で、左なのが東雛だ。左側が身分の高い者というのが古式なのだが、東雛が左なのは、大正天皇が即位の礼で西洋式に倣って右側に立たれて以来のことらしい。しかし、当時の絵葉書などでは貞明皇后の左におられ、また父君の明治天皇には、照憲皇后の右におられるものもある。この辺りのことを歴史的に見て行くのも面白いだろう。
 

by Abend5522 | 2013-03-03 19:32 |
2013年 01月 24日

人間臨終図巻

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 山田風太郎の『人間臨終図巻』。15歳で刑死した八百屋お七から百代で亡くなった泉重千代さんまで、有名人の生きざまが没年齢ごとに書かれている。もう何遍も読み返した、私の愛読書である。

 山田風太郎の文章は読みやすく、ウィットに富んでいる。幾つか引用してみよう。

  この人物の「臨終」については、「異教徒」にとってまことに書くことが難しい。(キリストの項)
  
  彼は、精神及び肉体の力を急激に破壊され、毎日やっていることは、友人ブラームスから贈られた地図から、国や都市の名を拾い出して、アルファベット順にならべることくらいだった。(この『臨終図巻』の著者の作業もそれに似たところがないでもない)  (シューマンの項)

  人間、コナばかり食っていても、入歯の必要が生じると見える。(福永武彦の項)

  「若い人」も老いてゆく。(石坂洋次郎の項)

 山田風太郎は、2001年に79歳で亡くなった。この『図巻 Ⅲ』の「七十九歳で死んだ人々」に、彼の項を加えてあげる人はいないのだろうか。



  

  

by Abend5522 | 2013-01-24 21:15 |
2013年 01月 07日

夢想


 戦闘シーン。一人の勇将が致命傷を受ける。カッと見開いた末期の眼が、迫り来る騎馬の乙女をとらえる。
 勇将は、仁王立ちのまま眼に映る乙女に向かって両腕を大きく開き、力一杯に叫ぶ。この時、叫び声を付けてはならない。
 騎馬の乙女が勇将に向けて槍を一振りすると、命尽きた彼の体は宙に舞い、乙女の馬に乗せられる。乙女は槍を高く掲げ、喜悦の表情で天空に向かって馬を飛ばせる。

 これは、ヴァルキューレの騎行シーンがアニメになったらと、私が以前から夢想しているものです。長い年月と多くの費用がかかり、商業的に成功するかどうか覚束ないのですが、世界に冠たる日本のアニメ技術を駆使して『指環』を歌劇どおりにアニメ化して欲しいと願っています。

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 『指環』のマンガは3種類持っています。里中満智子とあずみ椋のものは上下二巻です。里中のマンガは、持統天皇を描いた『天上の虹』も読んだことがあります。全8巻から成るマンガ名作オペラシリーズのひとつです。
 あずみは他に北欧神話のサーガなどもマンガにしているおり、その方面には精通している漫画家のようです。
 宮本えりかのものは四巻物で、歌劇にはないキャラクターも登場しますが、一番詳細に描かれていると思います。

 まだ観たことがないのですが、フリッツ・ラング監督が1924年にサイレント映画『ニーベルンゲン』を作っています。前編が「ジークフリート」、後編が「クリームヒルトの復讐」で、5時間もの大作だそうです。
 2004年の映画『ニーベルングの指環』は、レンタルDVDで観ました。ラングの作品もこの映画も、ワーグナーの歌劇ではなく、『ニーベルンゲンの歌』を素材としたものですが、この映画はいい作品です。王位継承の争いから逃れて育った王子ジークフリートと、アイスランドの女王ブリュンヒルデが織り成すスペクタクル・ロマンで、お勧めの一本です。

by Abend5522 | 2013-01-07 23:50 |
2012年 11月 21日

読み古した音楽の本


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 私のクラシック入門書。1965年の初版本で、上下巻がそれぞれ300円。
 大宮真琴氏の文章は平易で、有名な作品について親しみ易く解説されているが、上巻の前書きに、氏がNHKの「土曜コンサート」の解説を始めた時に長男が生まれ、6年後に番組が終了した直後に不慮の死を遂げてしまったことが淡々と綴られており、わずか6歳で世を去ってしまった、クラシックが好きだった息子にこの本を捧げたいと書かれているのには、痛切な思いを抱かずにはいられなかった。

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 堀内敬三と村田武雄の両氏が監修した本。1968年の初版本で、価格は460円。下鴨の「鴨川ボウル」でボウリングをした帰りに、今も健在の葵書房で買ったものだ。
 口絵に有名作曲家たちの肖像画や写真が載っている。マショーからブリテンまでが取り上げられているが、ブリテンの前にシュトックハウゼンやブーレーズの項がある。こちらはかなり詳細な解説が施されているが、時代ごとに区切られた各々の最初には、その時代の音楽史が詳しく書かれているので、音楽史の本としても価値がある。アルス・ノヴァ期やフランコ=フランドル楽派の歴史は、この本で基礎を学んだ。

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 ブログにも紹介したことがある、関西交響楽団時代から大阪POのマネージャーを務めた野口氏のエッセイ集。1971年の第三刷本で、価格は700円。
 我儘な楽団員相手の苦労話、朝比奈隆や正岡子規の息子との面白いエピソード、若き日のエッシェンバッハなど海外の演奏家との交流から、氏自身の痔瘻体験談まで、長年にわたって裏方に徹して来た人ならではのあれこれを知ることができる、楽しい一冊だ。コンヴィチュニーのことも書かれているので、その箇所を挙げておきたい。

「先年亡くなった偉大なマエストロ・コンヴィッチュニーは、ゲヴァントハウス・オーケストラといっしょに羽田空港に着いた。税関の中まで出迎えに行った私は、彼に、「今すぐブランディが飲みたい」と言われて困った。「ここでは無理だ」と言ったが、「飲まねば大阪行きの飛行機にも乗れない」と、美人の奥さんの言葉にアチコチ探して、やっとトリス・ウイスキーの飲み残しを持っていた部下のことを思い出した。それを恐る恐る飲んでもらって大阪へ連れて帰った。彼は強度のアル中だったのだ。日本から帰って間もなく亡くなった。しかしあの素晴らしい彼の「第九」の名演奏の記憶は、今も瞼に焼きついている。」(p19)

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これも、ブログで紹介したことがある。1986年の第三刷本で、価格は1700円。
著者の五島氏は、循環器病が専門の医師であるクラシック愛好家だ。ヘンデルからバルトークまでの、30人の作曲家について簡単に紹介し、医師の立場から病歴や死因について見解が述べられている。
 例えば、モーツァルトの死因は、「リウマチ熱から心臓弁膜症(大動脈弁口狭窄)がおこり、度重なる瀉血によって貧血をきたし、心不全をきたして死亡したという解釈がもっとも妥当なものではないかと思われる。」(p49)として、梅毒治療に用いた水銀による中毒死というケルナーの見解は支持していない。
 他にも、ウェーバーの項では青酸蒸気が当時咳止めに用いられていたことや、医師が彼に投与した「ガイルナウ水」とはどのようなものか不明としている。また、メンデルスゾーンの死因については、これを謎とするケルナーに同調しているなど、当時の治療法や病名判断などを知ることが出来る、有益な一冊だ。

 私は、スライド式の本棚を2台使っているが、これらの本はその一番上の棚に「殿堂入り」を果たしている。

by Abend5522 | 2012-11-21 00:53 |
2012年 08月 13日

今読んでいる本

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 親鸞の思想は画期的なものだが、それは近代以降に『歎異抄』によって初めて一般の知るところとなった。『歎異抄』は、室町期に本願寺蓮如が門外不出の書としてから長く封印されていたからだ。大学時代の師が親鸞の高弟の直系子孫であり、浄土教全般について多くを学んだが、同時に、惜しくも亡くなった吉本隆明の親鸞論からも多大の示唆を受けた。
 本書は親鸞の思想を様々な面から捉えたもので、平易に書かれている。書かれている事柄は既知のものばかりだが、ジャーナリストから日本宗教思想史の専門家となった筆者の語り口には好感が持てる一冊だ。

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 ケッヘルに関する本は、今まで読んだことがなかったので新鮮だ。彼が鉱物や植物を中心としたアマチュア博物学者であったことは興味深い。ここで培った収集と分類への熱意が、モーツァルトの作品整理にどう活かされて行くのか、未読のページが楽しみである。

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 森鴎外が音楽好きであったことをブログに書いたが、本書では鴎外の他に幸田露伴、島崎藤村、夏目漱石、寺田寅彦、永井荷風の、クラシック音楽との関わりが描かれている。現在、二人の妹が草創期の日本で音楽家となった幸田露伴の章を読んでいる最中である。
 本書は、同じ中公新書の内藤高『明治の音』、そしてsawyer様が取り上げておられた渡辺裕『歌う国民』と一緒に密林から古本で、大変お買い得であった。

by Abend5522 | 2012-08-13 00:52 |
2012年 03月 22日

今読んでいる本

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 幻冬舎新書から出ている中川右介の本も、何冊目かである。
 第九の誕生から始まり、この作品が様々な作曲家や指揮者によって、変容されつつ世界に拡散されて行く歴史が描かれていて、非常に読み応えがある。「クラシック・ジャーナル」編集長である中川の博識ぶりには驚くが、それをよく読み手に伝えるのは、良質なジャーナリストの筆致だろう。

 事柄の伝達にせよ、ロジックの開陳にせよ、書き方、言い方によって行為者の意志は様々な受け止められ方をする。それが最もよくわかるのが、政治と報道の世界だと思う。

 民主主義という統治形態において、権力は自らの意志を「民意」として表出する。宗権や王権において、教団や王の意志が「神の意志」として表出されたのと同じである。

 本書を読むと、第九もまたドイツ・ナショナリズム、社会主義、ヒューマニズムといった、相容れないものに共通して利用されて来た(そして、現代も利用され続けている)ことがわかる。その意味で、第九は「神」でもあり「民」でもあり、「縁起物」でもある。第4楽章をめぐる経緯などが、それを如実に伝えてくれる。

 大分読み進めた。今夜は、「学徒出陣と『第九』」の項からとなる。

by Abend5522 | 2012-03-22 22:22 |
2012年 02月 21日

b 子供心と図鑑の絵 b

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 『地球の図鑑』は、小学館の学習図鑑シリーズの一冊である。昭和39年発行で、定価380円。
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 この頁に、怪獣大好きの小学生だった私は、いつも感動した。恐竜の名称に使われる「~ザウルス」が「~ゾールス」になっているのも、時代を感じさせる。ステゴゾールス(剣竜)が一番好きだ。
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 無感(震度0)~激震(震度7)の地震規模図もよく読んだページである。「激震が走った」という慣用句は今も使われるが、激震の図にある解説を見ると、参照にされているのが関東地震(1923)と南海地震(1946)だ。関東地震は関東大震災のことだが、こういう呼称もあったのか。
 
 東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が営業を開始したのが昭和39年。東宝が『モスラ対ゴジラ』と『三大怪獣 地球最大の決戦』を公開し、怪獣映画にひとつの区切れ目が出来たのもこの年である。高度経済成長期の真只中の日本。この31年後に阪神・淡路大震災、47年後に東日本大震災が起こるのである。そして、この前年に、日本初の原発が東海村に建設されたのであった。

by Abend5522 | 2012-02-21 19:10 |