2013年 02月 26日
22日、サヴァリッシュが89歳で亡くなった。クラシックを聴き始めた頃、テレビの『NHKコンサートホール』で彼の指揮による演奏がよく放送されていた。中でも忘れられないのはブラ1の第2楽章で、当時のコンマスだった田中千香士の美しいソロとオケの絶妙な掛け合いが何と鮮烈だったことか。 現在持っているサヴァリッシュの録音は、チェコPOとのモーツァルトの交響曲38番~41番のCDだけだ。哀悼の意を込めて、好きな38番を聴いた。 ここからは、昔語りになる。 サヴァリッシュのサイン。1976年10月29日に、京都会館でスイス・ロマンドOのコンサートを聴いた時に貰ったものである。当夜の演目は、『田園』と『幻想交響曲』というユニークな取り合わせだった。スイスのオケであることへの配慮がうかがえる。アンコールがラヴェルの『ラ・ヴァルス』だった。 私のコンサート・ノートを見ると、アンセルメがサヴァリッシュをスイス・ロマンドOの後任音楽監督として白羽の矢を立て、アンセルメの死後の1970年にそれが実現したと書いてある。当時の私は、このコンサートにかなり感動したようで、両曲とも標題性に囚われないサヴァリッシュの指揮ぶりと、スイス・ロマンドの柔らかい響きを賞賛している。また、『幻想交響曲』は違う版による演奏ではないかとも書いていて、終楽章での鐘が舞台の左裏から鳴らされた工夫にも言及していた。もう37年近く前の、私の感想である。 翌1977年4月25日には、F=ディースカウのリサイタルで、サヴァリッシュがピアノを弾いた『冬の旅』を聴いた。リサイタルには大き過ぎる大阪フェスティヴァルホールだったので、舞台には屏風が立てられていたのが印象的だった。F=ディースカウには声の衰えが随所に感じられたが、サヴァリッシュのピアノは正確で淡々としたもので、ピアニストとしての彼を聴けたのは貴重な体験であった。最後の「辻音楽師」が終わると、充分な余韻を残して拍手が起こったのには、フライング拍手にうっとうしい思いをするコンサートが多かっただけに、聴衆の質の良さにも感動した。 サヴァリッシュはスター指揮者や一代を画した巨匠でもなかったが、着実に地歩を固めた誠実な指揮ぶりは長く心に残るだろう。
by Abend5522
| 2013-02-26 02:16
| クラシック音楽
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