2012年 04月 08日
ベートーヴェンの交響曲で、聴く頻度が最も少ない曲である。レコード時代から、1番とカップリングされていても2番の方は聴かずじまいということがよくあった。交響曲全集が手軽に買えるようになった現在でも然りである。 2番は、何かもどかしい。切れ切れの楽想が、統合されないまま連結させられているという印象を受ける。これは、ハイリゲンシュタットの遺書に見られる、失われ行く聴覚への絶望と芸術に対する使命感が、時を経ていないために互いを引っ張り合っている状況の所以だろうか。当時の医療技術では如何ともし難い身体の現実がこの使命感を形成したとすれば、それはベートーヴェンの反抗精神というほかないだろう。 さて、挙げたのはウィン・モリス/ロンドンSOの全集盤からである。モリスは、バリー・クーパー補筆による第10番を初めて録音した指揮者で、これは既にCDを持っているのだが、補筆というよりも殆どクーパーの作品というべきものだった。 モリスは一昨年に81歳で亡くなった。マーラー指揮者として有名だが、私は聴いたことがない。 モリスは、速いテンポで一気呵成に演奏をしている。第一楽章序奏では、往年のドイツの指揮者を彷彿させる引き摺るようなトゥッティを聴かせるが、総体的にはザッハリッヒなスタンスである。特にどのパートを強調したりすることも、歌わせることもなく、ロンドンSOの高い技量を駆使して推進力の豊かな演奏を展開している。2番に関しては、こういう演奏が好きである。
by Abend5522
| 2012-04-08 20:58
| クラシック音楽
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