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Abendの憂我な部屋

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2012年 03月 09日

◆ ブログ連動企画第6弾 ストコフスキーの『シェエラザード』心療録 ◆

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 大きな特徴は、楽章を区切らずに演奏している点である。ケンペ/ロイヤルPO盤(他には、これしか持っていない)も聴いてみたが、楽章で区切っている。

 楽章を区切っていないということは、彼がこの曲を、シェエラザードがシャフリヤール王にする「お話集」として見ていなかったことを示している。意味深長である。

 『千夜一夜物語』は、王妃の不貞によって女性憎悪に陥った患者(シャフリヤール王)と、優れた心理カウンセラー(シェエーラザード)とのカウンセリングの記録であり、近代以前にあっては、それが説話集という形態を取っただけである。故に、重要なのはカウンセリングによる患者とカウンセラーの変化の過程であって、楽章で区切るとこれを分断することになってしまう。シェエラザードが夜ごとに様々な話をしたとて、それが彼女と王の間でなされる治療の過程であることは一貫している。多彩な話の「集まり」に意識を奪われてしまうと、それらがカウンセリングの「流れ」で用いられた材料であることを見逃してしまうだろう。楽章を区切らないストコフスキーの演奏は、まさにこの「流れ」において曲を捉えたものである。

 『シェエラザード』の、5回目にして最後の録音というから、ストコフスキーはこの作品に特別な思いがあったのだろう。4回目までの録音で楽章を区切っているかどうかは知らない。ご教示を請う次第である。

 ケンペ盤は、起伏の大きい、ロマンの色濃い演奏を繰り広げている。同じロイヤルPOでも、ストコフスキー盤は静謐で緻密な演奏だ。ヴァイオリン・ソロにロンドンSOのコンマスたるグリューエンバーグを配したのも正解で、芯のしっかりした美音が、かなり鍛えたであろうロイヤルPOの精緻な音の中で光彩を放っている。一筋縄では行かないシャフリヤール王の症状に困惑しつつも、根気強くカウンセリングを行うシェエラザードの姿が想像される。

 「交響組曲」というヌエ的ジャンル名が冠せられることもなくなった『シェエラザード』。ストコフスキーは、この作品名どおりに、シャフリヤール王が憎悪する女性でありつつ、カウンセラーとして王の心を救う彼女の姿を見事に表現したといえる。シェエラザード。王の心を救ったのは、彼女の豊かな母性だったのかも知れない。

 sawyer様、私もプリンターのスキャナー機能でジャケを取り込んでみました。
 お次は、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』からの5曲など如何でしょうか。
  

by Abend5522 | 2012-03-09 23:38 | クラシック音楽


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